1 はじめに
私たち,鹿児島県県立市来農芸高等学校自主研究班は昭和18年に天然記念物として指定された「薩摩鶏」が,年々飼育羽数が減少していることをしりました。
平成31年から県薩摩鶏保存会と連携しながら,「多くの人に薩摩鶏を知ってもらうためのPR活動」「飼育羽数減少に歯止めをかける活動」を中心に行ってきました。
今回,薩摩鶏だけでなく,全国の優良鶏の系統維持に貢献できないかと思い,活動を報告させていただく,機会をいただきました。
2 活動の実際
① 薩摩鶏の行動パターン調査
薩摩鶏が早朝から日没までどのような行動をしているのか,年間を通して調査することにしました。
午前5時から午後7時まで1分間ごとにタイムラプスカメラ(低速度撮影カメラ)で撮影して得られた写真データをパソコンに映し出し,一コマごとに再生して行動内容と移動距離を算出する本校オリジナルの調査方法で行動パターンを検証しました。
一日約900枚分の写真を分析してパソコンに入力し,時間毎や日の出や日の入りを基準とした行動パターンを分析しました。
② 分析結果に基づいた行動パターンの検証
合計13万枚以上の写真データより得られた結果から
① 時間毎の算出行動距離は,グラフのとおり正午あたりから休息が多くなるМ字型となる。
②日の出後に止まり木から離れてから夕方に止まり木に戻るまでの「活動時間」は年間を通して13時間を超えることはない。
③摂食は日没前夕方に集中している。
など様々な行動パターンがあると推察しました。
つまり,
①止まり木から離れた活発な行動の後,11時~14時までは休息している。
②一日のうち,11時間は止まり木で休んでいる。
③夕方に摂食が多くなるのは,夜間に止まり木で安全を確保し「そのう」に蓄えた栄養素を消化しながら休む。
といったことが推察されます。
③ 行動パターンに対応した飼育小屋の作製
薩摩鶏の飼育者が少なくなった原因の一つとして早朝の鳴き声による騒音問題があると感じました。
そこで住宅地における環境省の騒音基準に則って,
①午後10時から午前6時までは45㏈以下の静かな状態を保つ。
②午前6時から9時までは鳴き声があっても55㏈以上にならないようにし,日中は薩摩鶏自身もストレスなく生活し,近所迷惑にならない60㏈以下に保つ。
ことを目安として夏休みから飼育小屋の作製を行いました。完成した小屋で何度も予備試験を繰り返しながら100㏈の音量を約50㏈まで軽減することができました。
④ 飼育実験結果
3月よりつがいの薩摩鶏で防音試験を開始しました。
夕方から翌朝までの経過を騒音計とパソコンにつなぎ,1秒おきに測定したグラフデータで検証していきました。
結果として早朝の初鳴きが始まる時刻は日の出が早くなるほど早まっていく傾向があり,飼育小屋の改善を行いました。
飼育小屋を点検した結果,特に正面扉の吸音効果が不十分であることが判明したため,吸音・遮音パネルを増設しました。
検証データにある「活動時間13時間以内=休息時間11時間」を基に,午後7時から午前6時を休息時間となるよう心がけた結果,グラフのとおり,環境省基準をクリアできるところまで改善できました。
3 さいごに
私たちは高校生の行う活動として様々な制限がある中で活動しています。
大きなことはできませんが薩摩に生まれし鶏を守るために,高校生だからこそできる地域貢献の在り方を模索しながら,これからも活動を続けていきます。