大腸菌症

Colibacillosis【大腸菌症】


大腸菌症

 本症は、大腸菌(Escherichia coli)によって起こります。
 大腸菌は、鶏の腸管内に常在しますが、健康な鶏には発病しません。
 しかし、鶏に感染性あるいは環境性ストレスがかかったとき、呼吸器感染から敗血症を起こして発病します。(大腸菌性敗血症:Coli-septicemia)本症は養鶏産業に重大な経済的損失を与えています。

大腸菌症 症状

 とりわけ、ブロイラーでの発生率は高いです。

 すなわち、出荷直前の6~9週間齢での発生が最も多く、養鶏場における重要な疾病の1つです。

 病例から分離される大腸菌の血清型はO抗原(菌体抗原)で、O2、O78、O1が比較的多いのですが、その他種々の血清型あるいは血清型別不能の大腸菌も多く、また、血清型と病原性は特別関係しません。

 初生ひなで孵化後数日以内に見られる大腸菌症は、介卵感染によるもので、その多くは種卵表面の糞便に汚染され、大腸菌が卵殻を通過して侵入することにより起こります。(on eggの感染)

 しかし、時には母鶏の卵巣や卵管が大腸菌に汚染され、その時形成された卵の内部に大腸菌が侵入することによる場合もあります。(in eggの感染)

 実験的にも、大腸菌接種した母鶏の出産した卵の26.5%が大腸菌を含んでいたという報告もあります。

 産卵を開始したばかりの若どりと成鶏では、感染経路は主に呼吸器です。

 鶏舎の糞埃は、1gあたり10~100万個の大腸菌を含み、これは長期間生残すことといわれています。

 鶏はこのような大腸菌を含む塵埃を吸入して呼吸器感染を起こし、最近が肺の肺胞壁を通って毛細血管内へ侵入すると、菌血症あるいは、肺血症を起こすと推測されています。

 健康鶏では、呼吸器の上皮細胞の線毛運動で最近を排除することができますが、種々の原因で呼吸器上皮が傷害されると大腸菌の増殖を許します。

 また、たとえ鶏が菌血症におちいっても、鶏体内の感染防御機能が正常であれば、敗血症性病変は軽微に終わります。

 しかし、これらの防御機能は種々のストレスによって減弱します。

 マイコプラズマ、伝染性気管支炎ウイルス、弱毒ニューコッカス病ウイルス、伝染性コリーザの病原体であるHaemophilus paragallinarumなどの鶏の鼻、喉頭、気管、気嚢などの上部気道において粘上皮細胞を破壊し、大腸菌の粘膜上皮の付着、定着を容易にします。

 また、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスは鶏のファブリキウス嚢を破壊して、液性抗体産生を抑制し、大腸菌に対する感受性を高めるとされています。

 このほか、寒冷、暑熱、換気不良、密飼、栄養の不均衡など種々のストレスが鶏の大腸菌に対する感受性を高めるとされています。

症状

 最初は元気消失、呼吸器症状を示すものがみられ、敗血症に陥った鶏は、体温が上昇(42.2~43.5℃)し、糞便で汚れた羽毛を逆立てて、やがて死亡します。

 発生群における罹患率は、一般に10%以上です。

 死亡率は通常の5%以下ですが、ときには20%にも達します。

 関節炎のある鶏では、脚弱を示します。

予防・治療・対策

 外国では不活化ワクチンがありますが、効果的ではありません。

 治療には、抗生物質が使用されますが、薬剤耐性菌が多いので、使用薬剤は、感受性を調べてから選択することが望ましいです。

 対策としては、誘因となる呼吸器障害や免疫抑制を起こす要因を排除するように注意し、良好な衛星管理、飼育管理を維持することです。

 また、ひなによる病原体の伝播ならびに幼雛の損耗防止のために孵卵衛生を改善します。